予防処置
長い間、虫歯の3大予防原則として、
1.「砂糖の制限」
2.「ブラッシング(歯磨き)」
3.「早期発見・早期治療」
が信じられてきました。
でも、ほんとうにこれらが子どもの健康な歯の育成に充分貢献してきたのでしょうか?
統計によりますと、日本における12歳児の虫歯の数は、他の先進諸国と比較しますと、減少傾向にはありますが際だって高い数値を示しているのが現状です。
1.「砂糖の制限」
年間砂糖消費量を調べますと、日本より多く摂取しているのに、虫歯の少ない国があります。
2.「ブラッシング(歯磨き)」
随分昔から、その重要性が言われてきたはずです。
3.「早期発見・早期治療」
これまでは、一般に見つけたらすぐ削って詰めることが正しい虫歯の治療とされてきました。
実は、虫歯には、【う蝕(うしょく)】と【う窩(うか)】の2種類があります(【う蝕】が進行すると【う窩】になります)。まだ【う蝕】の状態なら、適切な予防処置を施せば削らなくても治ります。一度削った歯は取り戻せません。虫歯や歯周病は、細菌感染によって発症します。
今では虫歯の発症や進行の過程もかなり解明されてきました。悪くなってからの治療ではなく、『虫歯の発症や進行をコントロールする治療』が、充分可能になりました。
患者さんの御希望により、現在感染している「虫歯菌」や「歯周病原菌」の種類を特定できる"唾液検査"を行っております。検査によりそれぞれの菌を特定できましたら、その菌の除菌処置を行います。「虫歯」や「歯周病」になってから治療するのではなく、なりにくいお口の中の環境を整えることも大切です。
検査はガムを噛んでもらい唾液を採取するだけですので、短時間で痛みは全くありません。こどもから大人まで、各種コースがあります。
お子さんのために
1.眠りについたら、乳首から離してあげるのが基本です。眠りについても、くわえていると広範囲に虫歯になる可能性があります。唾液には抗菌作用がありますが、寝ている間は唾液の分泌量が少なくなる為です。
2.親とお子さんの食器をいっしょにしてしまいますと、もし唾液検査の結果、親が虫歯菌の保菌者ですと簡単にお子さんに感染してしまいます。おしゃぶりやスプーンを細菌培養検査しますと、黒いつぶつぶ状のコロニー(細菌の群集)を検出することが多々あります。親と子のスキンシップは言うまでもなく大切ですが、気を付けなければなりませんね。虫歯菌の一種のSM(ストレプトコッカス・ミュータンス)菌は、母子感染によるものです。そして一度定着しますと、同じ虫歯菌のLB(ラクトバチラス)菌に比べると、除菌されにくくなります。
ある文献によりますと、
4歳時の虫歯になる確率
*1~2歳でSM菌が定着・・・・・・・・・・・・・・・・・・89%
*2~3歳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74%
*3~4歳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36%
*4歳までにSM菌が定着しなかった場合・・・・・25%
とも言われております。
3. ブグブグうがいができるようになったら、フッ素入り歯磨き剤の使用が大切です。
歯の外側の成分と卵の殻の成分は似ております。卵の下部だけをフッソ入り歯磨き剤に浸して数十分間おきます。(左図)
その後、ビーカーの中にお酢30%水溶液を準備しておき、その中に卵を横にして数十分間入れます。(右図)
右図の右半分(卵の上部)はフッ素入り歯磨き剤を塗りませんでしたので、つぶつぶの泡がいっぱい見えます。表面が溶けているという事です。
右図の左半分(卵の下部)を見てみましょう。フッ素入り歯磨き剤に浸しておいたため、泡は少ししか見つける事ができません。
(上写真は、当医院での実験)
3歳までが、味覚の形成時期です。将来、虫歯ができにくい様なお子さまのお口の環境を整えてあげる事が、お子さまに対する最高のプレゼントだと思います。(^o^)
以下、熊谷崇先生(山形県酒田市開業)監修より抜粋